
それもそのはず、真冬の牧場エリアは白銀の世界で人影も皆無、
その上、生まれながらにして母犬から
人には絶対に近付いてはいけないと学んだ
所謂その道のエリートですから、当然人に対しての警戒心は
そう簡単には抜けるはずもありません。
たっぷり時間を取り社会化、
先ずは人馴れしてもらう為のトレーニングが何より必要でした。
同じ部屋で暮らしじっくり心ゆく迄人間観察してもらい、
暖かい部屋とふかふかなベッド、美味しい食事、
清潔なトイレ、充分な運動、人間って悪く無いかも?と
少しでも思って貰える様にただひたすら奉仕あるのみ。
そんなサザエの強みは、緊張しても
食べ物を差し出せば食べてくれるところでした。
極端に繊細で臆病な場合、飲まず食わずというケースも珍しくありません。
とにかく一緒に居られる時間を設け、
人間は怖くないという事を理解してもらえるよう全集中の日々でした。
緊張状態の解消法は何よりお散歩です。
同じ方向を向いて歩く(体を動かす)事が緊張を解し
群れで移動する事で仲間意識を育んでくれます。
正面から向き合うと、特に目が合うと、どうしても緊張しますが
横に並ぶことで視線も外れ緊張は最小限に留められます。
その上お散歩途中で食べる事が犬としての本能を満たしてくれます。
リードを着ける際にどうしても向き合わなければなりませんが、
出来る限り背中〜横向きでさり気なく行うようにすると
緊張は最小限に抑えられ、すぐにお散歩に行く事で
その流れをすぐに理解してくれます。
リードを付ける練習は、お散歩から戻った直後に何度も何度も繰り返す事で
殆ど気にしなくなりました。
慣れて来るとお散歩が少しずつ楽しくなって来ました。
横目で尻尾の位置等を確認し、良いタイミングでのおやつ、
時には目線でアピール、次第に自発的におすわりも。
お散歩が楽しくなるとそこからの人馴れのスピードは一気に上がりました。
歩きながら小さく砕いたおやつも食べられるようにもなり
益々お散歩が大好きになり、少し前までのお散歩前のリード付けから
玄関を出るまでの流れもとてもスムーズになると
お漏らしの習慣もいつの間にか消えました。
毎週里親会に参加し、沢山の人達や賑やかなエリアでのお散歩にも耐性がついて
少し楽しめるようになってきました、
見た目の可愛らしさから応募は数件いただきましたが、
繊細で警戒心の強さを説明すると、なかなかお見合いにまで
進展する事はありませんでしたが、遂に素敵な出会いが!
お見合い当日も、サザエは最初から最後まで固まったままで
良い所無しでしたが、それでも家族に迎え入れたいとの嬉しい申し出
これが運命というものなのですね!
奥様は以前、中型雑種保護犬との暮らしを経験され
その子(19歳!)を亡くして悲しみから
なかなか次に進む事が出来なかったそうなのですが、
犬との暮らし未経験の旦那様と犬との暮らしの素晴らしさを
共感したいとの思いからこの度の出会いを引き寄せてくださいました。
里親さんのお家は都会の閑静な住宅街という事もあり、
お散歩トレーニングもコースを賑やかな場所に移し練習を積重ねました。
もちろん、脱走防止対策もしっかり!
お届け当日はお部屋に入る前に、いつも一緒に散歩していた
ターシャに同行してもらいお散歩しながらのご挨拶。
大きな道路を一本渡れば自然豊かな大きい公園という
犬との暮らしに理想的な場所で、初めての場所にもかかわらず
サザエは尻尾フリフリ気持ち良くお散歩出来ました。
緊張が解けた頃を見計らってリードをご主人にバトンタッチ、
サザエは特に気にする事無く森の中の匂いを嗅ぎながらお散歩を満喫!
続いて奥様にバトンタッチ。
お散歩を開始して30位経過し、
公園から住宅街の賑やかなメイン通りに出た頃、
前からスーツケースをコロコロと転がす女性が!
これは里親さんに、サザエのパニック状態を見せることが出来る
良い機会と捉え、パニックになると思うので
注意して見ていて下さいとお伝えし、一瞬人間達の間に緊張が走りました。
しかし、当のサザエは街路樹の匂いを嗅ぐ事に夢中で全然気にしてない!
その後も幼稚園児の集団もガソリンスタンドの洗車機や
コンプレッサーの大きな音も動じず全て難無くクリアしてしまいました(笑)
サザエの目を見張る成長に私自身が一番驚かされました。
ターシャが居るからかなとも思い、一旦ターシャには車で待ってもらい
ターシャ抜きでお散歩しましたが、それでもとっても落ち着いて
穏やかにお散歩する事が出来ました!
しかし、全て上手く行くわけもなく、
お部屋に入り、一休みした後にもう一度お散歩に行こうと
リードを付けようとすると、お漏らししてしまいました(泣)
後日もお散歩前にリードを付ける際にお漏らしがあったそうですが、
お散歩は相変わらず上手に楽しんでくれています。
里親さんとの距離は未だ若干あるそうですが、
長い目で見守りますとの温かいお言葉をいただき
無事トライアル期間を終え、つぶちゃんという可愛い名前をもらって
めでたく正式譲渡となりました!
その後もよそよそしさは残るものの
そんなつぶちゃんの全てが、可愛くて可愛くて
どうしようもありません!との嬉しい報告
広くて深い愛情たっぷりのご夫婦に包まれ
つぶちゃんは本物の幸せを掴みました。
先日無事に避妊手術も終え、ピンクの可愛い
リカバリーウエア姿のつぶちゃんの写真を送ってくださいました。
警戒心が強く繊細な子の飼育は正直、難しさもあります。
しかし、その分ほんの少しの進歩に大きな喜びがあり
人間も忍耐力や包容力が発揮され、日々の小さな幸せに気付かされます。
なかなか通じ合えないもどかしさはありますが
上手に表現出来ないだけで心は繋がっています。
つぶちゃんずっとのお家おめでとう🎉